
OTTO製菓 田邉さんに聞く、JIN-TANOキッチン活用インタビュー
JIN-TANOキッチンを実際に活用されている作家さんの声をお届けするインタビュー企画。今回は、安城市から高浜・碧南エリアのJIN-TANOに通い、洋菓子の製造販売を営むOTTO製菓の田邉さんにお話を伺いました。会社員からの独立、業務用オーブンとの向き合い方、そして売り先の選び方まで、ご本人の言葉でそのままお伝えします。
この記事を読んで欲しい人
- 家庭用オーブンの限界を感じている副業作家:業務用でどう変わるか、具体的な温度と時間で分かる
- メルカリかマルシェか迷っている副業作家:両方経験した人の比較で判断できる
- 開業を決断できずにいる人:独立直前の不安と、その回避策が分かる
神谷:まず、簡単な自己紹介をお願いします。
田邉:OTTO製菓という屋号で洋菓子の製造販売をしております、田邉と申します。一人で自営業なので、営業から製造販売まで一人でやっています。
神谷:開業されて何年になるんでしょうか。
田邉:今1年半ですね。去年の1月に開業しました。
神谷:開業の1年半前までは何をされていたんでしょうか。
田邉:それまではお菓子屋さんで雇われで働いていました。2022年ぐらいから、ほぼこっそり副業でOTTO製菓という名前で、メルカリを中心にオンラインで、あとは半年に1回ぐらいマルシェでお菓子を作って売っていました。
神谷:お菓子はどこで作られていたんですか。
田邉:家のキッチンで作って売ることは認められていないので、住んでいる安城市にあるシェアキッチンで食品営業許可を通して作って売っていました。

JIN-TANOキッチンとの出会い
神谷:JIN-TANOにいらっしゃったきっかけは何だったでしょうか。
田邉:2020年頃から細々と副業でやっていた頃のキッチンが、作りたいお菓子を作る上で手狭になってきたり、設備の面で足りない部分を感じていました。とはいえ自分でキッチンを構えるだけの資金もなく、事業がうまくいく自信もなかったので、もう少しグレードの高い、かつ時間貸しで使えるキッチンを探していました。そんな時、たまたま当時JIN-TANOを使っていた徳美さんという方のインスタグラムを見て、ハイグレードなキッチンの写真に惹かれてDMしたんです。見学の時間を作ってくださって、そこで初めて神谷社長とお会いしました。
神谷:初めていらっしゃった時の印象はどうでしたか。
田邉:前のキッチンに比べて格段に良いと思いました。一番大きかったのは、前のキッチンが家庭用オーブンが並んでいるような状態だったのに対し、JIN-TANOには200Vの業務用オーブン(一番小さいグレード)が入っていたことです。
神谷:キッチンを選ぶ上で一番重視されたポイントは何でしたか。
田邉:設備が大前提です。プロとしてやってきた以上、それに近い設備を再現できることが欲しかったです。あとは予約の取りやすさもポイントでした。見学に来た時、当時の利用組数を聞いて「これなら使えそうだ」と思いました。
神谷:距離は問題になりませんでしたか。
田邉:前のキッチンより倍以上遠くなりましたが、それでも設備の良さで生産性が上がると感じたので、距離はカバーできると思いました。
業務用オーブンの使いこなし方
神谷:業務用と家庭用はどう違うんでしょうか。
田邉:焼く時間がまったく違いますし、焼きムラも少ないです。
神谷:家庭用から業務用に変える時の心得や注意点はありますか。
田邉:まず設定温度がかなり変わりました。家庭用オーブンで180度で焼いていたものが、JIN-TANOのオーブンだと160度になるといった具合で、何回か試すうちに見つけていきました。最初は焼成テスト(温度も時間も)が必要だと思います。
神谷:時間はどう変わりましたか。
田邉:ものによりますが、20分かかっていたのが16分ぐらいになったりしました。原因はおそらく蓄熱の違いです。オーブンは同じ180度設定でも、扉を開けた時の温度の下がり方や、その後の温度が戻る循環能力に差が出るんだと思います。
神谷:業務用の方が作りやすいものでしょうか。
田邉:結局オーブンごとに個性があるので、最初の設定探しは絶対必要だと思います。私はパティシエとして、20年近くやってきたので、その経験を業務用オーブンに落とし込みやすかったんだと思います。一般の作家さんも、業務用に変える際は何回か調整テストをして自分のものにする必要があると思います。
神谷:スチームコンベクションオーブンについて教えてください。活かせるメニューはありますか。
田邉:私が使っていた時はスチーム機能自体は使っていませんでしたが、スチーム機能を使うとダンパー(蒸気の逃がし口)が開閉できる仕組みでした。私はホットエア(乾燥焼き)でお菓子をふくらませてから、スチーム0%で乾燥焼きするという使い方をしていました。当時扱っていたのはチーズケーキ以外はほぼ焼き菓子・乾き菓子で、日持ちしない蒸しプリンなどは扱っていませんでしたが、スチーム機能を使えば蒸しプリンのようなお菓子にも十分対応できると思います。技術面で分からないことがあれば、キッチンに機材を入れているメーカーの方(ホシザキ)に直接質問できるのも大きな強みだと思います。

JIN-TANOキッチンの強み
神谷:JIN-TANOがお菓子作りに向いている点、設備や配置についてご意見があればお願いします。
田邉:私は一人でやっているので、2〜3歩以内に物があってちょうど良いです。もし2〜3人のチームだと狭く感じるかもしれません。あと、業務用の大きめの冷蔵庫・冷凍庫を使えるのも大きいですね。時間貸しで運営していく以上、1日にどれだけお菓子を作って保管しておけるかは重要です。継続的に売っていくつもりだったので、半製品や製品を保管できる場所があるのはありがたいです。
神谷:今後JIN-TANOにこういう設備があったら、というご要望はありますか。
田邉:強いていえば、オーブンがもう1台、もしくはもう少し大きいものがあれば、いろんな種類を一度にたくさん作れるので個人的には嬉しいです。ただ、借りている身なので、利用者がどこまでの生産能力を求めるか次第だとは思います。
今後の展望──三河の地元食材を使ったお菓子作り
神谷:今後のお考え、地元産品を使ったお菓子の企画について教えてください。
田邉:三河の地で生産されている材料が、自分のお菓子作りととてもマッチしていると感じています。三河のみりん、白たまり醤油、岡崎の八丁味噌、安城周辺の農産物などです。移住してみて、愛知は車産業だけでなく農産物も強いと知って面白いと感じています。小さい規模のお菓子屋が問屋から仕入れた外国産フルーツを加工するより、地元の農園から仕入れたフルーツを自分で加工する方が、ストーリーがあり付加価値の高いお菓子になると思っています。
今後は、名古屋駅前のグランドキオスクや刈谷のハイウェイオアシスのようなお土産物売り場に、地元の材料を使った、産地のわかるお菓子を売り込んでいきたいです。ただ、お土産菓子は利益率がシビアな面もあるので、どこまで付加価値をつけて市場に入り込めるか、いろいろ作戦を立てる必要があると思っています。
神谷:OTTO製菓さんのチーズケーキが大好きなのですが、そのお話もぜひ。
田邉:JIN-TANOのオーブンがいいと思った理由の一つが、このチーズケーキをうまく焼けたことなんです。一般家庭のオーブンは最大でも250度程度までしか焼けませんが、業務用は最大温度のブレーキがなく、設定300度まで焼き続けられました。この高温での加熱能力があったからこそ、今の主力商品であるチーズケーキが完成しました。家庭用オーブンでは作れなかったお菓子です。
このチーズケーキは要冷蔵で日持ちがせず、サイズも大きい(12センチ)ので解凍時間も必要になり、お土産市場には少し合わないかなと考えています。なので、オンラインショップやふるさと納税など、冷凍で送れる商品として強めていきたいと思っています。

売り先の選び方──メルカリとマルシェ
神谷:副業時代、メルカリとマルシェを併用されていたとのことですが、趣味程度で副業を始めたい方には、どちらがおすすめですか。
田邉:マルシェの方がいいと思います。売っている人間の顔が見えるし、お菓子を手に取ってアピールできるので。
神谷:メルカリだと注文が入ってから作れて手離れが良さそうですが。
田邉:売れる体験としてはマルシェの方が手っ取り早いです。メルカリは商品ページが膨大にあるので、頻繁にアップすれば上位表示されますが、マルシェの方が簡単に売上が目に見える形で立ちます。
神谷:メルカリとマルシェのユーザー層に違いはありますか。
田邉:メルカリは基本的に常温商品限定で、送料も乗ってきます。また、どこの誰かわからない人からネットで買う勇気が必要なので、ホームページやオンラインショップがしっかりしていないと手に取ってもらいにくいです。私のページも一応ありますが、ほとんど注文は入りません。おそらく「プロがやっています」という雰囲気だけでは足りず、ページを作っては消して新しく上げ続けるような、継続的な運用の工夫が必要なんだと思います。
神谷:JIN-TANOで開催されたマルシェに参加されました、他のマルシェとどう違いましたか。
田邉:いわゆる身内だけで完結するようなクローズドなマルシェとは違い、地域の方や本当に何かを買いに来ている人が集まる印象でした。ロードサイドの個人店に来る人と同じで、来場者は「買うつもり」で来ている感覚がありましたね。
神谷:最近はイベントと合同のマルシェみたいのもあります。開催されるイベントによって客層は変わりますか。
田邉:かなり変わります。以前、子供向けにヒーローショーのようなイベントが隣でやっていたマルシェに出た時は、私のお菓子はそこまで安くないので全然売れませんでした。隣のイベントがどんな客層を狙っているか、その財布を持った人が誰に向けてお菓子を買いたくなるかを見極めないと、価格帯がマッチせず苦戦します。
独立開業のボトルネック
神谷:独立開業を考える方にとって、最初に立ちはだかるボトルネックはどんな部分だと思いますか。
田邉:サラリーマンだと毎月決まった額が入ってきますが、独立するとそれがなくなる恐怖がまずあります。大きな店舗を構えると返済だけでお金が消えていきますし、人を雇う必要も出てきて、売れても売れなくても人件費が発生します。だからまずは一人でできる範囲で始めるのが良いと思い、店舗を持たずに製造拠点としてシェアキッチンを探しました。要は初期投資を抑えることが大事です。会社の看板がなくなった今の自分に、まだ実力があるとは限らないので、スモールスタートで自分が通用するかを見極める必要があると思います。
これからお菓子作りを始める方へ
神谷:この地域でお菓子を作りたいという作家さんへ、エールをお願いします。
田邉:自分一人で事業を立ち上げる際、土地や建物を構えて何千万も投資するのは今の時代難しいと思います。まずは委託販売やマルシェ参加といったスモールスタートで、シェアキッチンを最大限活用して腕試しをし、いけそうならスケールアップしていく流れが良いのではないかと思います。JIN-TANOはそういう使い方として、私自身とても有効活用させてもらいました。
神谷:今日はありがとうございました。
田邉さんのように「まずは腕試しから」という方は、JIN-TANOキッチンの見学予約からお気軽にどうぞ。

起業・副業の相談はJIN-TANO
まずは小さく初めてみよう。 頭の中だけで考えていても始まりません。話をしてみて、行動してみて、多くの気付きが有ります。 まずは、気軽にお問い合わせください。
編集後記
今回お話を伺って印象に残ったのは、田邉さんが設備の良し悪しを「なんとなく」ではなく、焼成温度や時間の変化という具体的な数字で語ってくれたことです。180度が160度に、20分が16分に変わる。この差の積み重ねが、300度まで焼けるからこそ完成したというチーズケーキにつながっています。独立や副業の話も、精神論ではなく「まず一人でできる範囲から」という現実的な判断として語られていたのが印象的でした。次回以降も、こうした利用者の生の言葉を届けていきたいと思います。